ボールを触っている姿が見られるわけではないから、そんなにイベントは好きではありません。しかし、何事も『初めては、一度きり』。クラブ史上初の試みらしいを見に、宇都宮へ行ってきました。
会場は、練習場にも近い(はず…『まっぷる栃木』の付録・宇都宮MAPによると)ショッピングモール・ベルモール。宇都宮市内で訪れた経験のあるスポット=グリスタと駅ビルの餃子屋のみであるため、まず会場までのバス路線を把握するのが一苦労。JR宇都宮駅から片道260円と150円の路線があったり。
入店すると程なく、吹き抜けに聳え立つカリヨンツリー(49もの大小の鐘が並び、世界でも屈指のサイズだとか)の根元で設営作業をする方々と、円形の空間をぐるりと囲む人の列を認めました。会場入場&握手会参加の整理券は開始の2時間前より先着300名に配布と告知され、正直、諦め気味で足を運んだのですが…配布開始直前の段階で並んでいるのは、100人にも満たなさそうでした。私たちは整理券をゲットしてからモール内の飲食店でお昼ご飯を食べたんですけど、食後のドリンクまで満喫して出てきた後でさえ、まだ配布していました…。
狭い空間にどうやって椅子を300も並べるのだろうという心配も、まさかの“床へ直接座る”で無駄に終わりました。ともあれ『2010 栃木SC ニューインプレッション』なる看板が掲げられたイベントは、司会・篠田和之アナウンサーの紹介を受けながら、選手が指定の丸椅子へ着席して始まりました。
入場直前、わらわらとステージ横に現れた、TKCの文字が胸に躍る紺ジャージをまとう集団。なぜだか、トークショーは私服で行うものだと思い込んでいた私には、その装束がまず1発目の強烈なパンチでした。現地では知らなかったのですが、イベント前に、同じ建物内で新体制会見を済ませていたのです。
心の準備ができてなかったんです、船山さんが、新しい仕事着へ袖を通すことに対して。
コールされる順番待ちの間、隣の林祐征さんと喋っていた船山さん。二人の身長差(187cmと170cm)は相当ですが、新入団選手全体を見たら、船山さん一人が小柄で目立つわけでもない顔触れ。高木和正さん(170cm)は、サンフレッチェへ入ったばかりの頃にトヨタSCでお会いして以来です。ステージへ間隔狭く並べられた丸椅子のうち、船山さんへ与えられたのは前列中央。
「関東1部ベストイレブン、流経の点取り屋から栃木の点取り屋になって下さい!! FW、背番号20、船山貴之選手!」
気がつけば、2階や3階にも吹き抜けを囲む人が集まった(クラブ発表では来場者500人以上)空間へ、船山さんは緊張からか、青白い顔をして入ってきました。20番を前に誰がつけていたか、知らないのは、500人のうちで私ぐらいだったのかもしれません。アルビレックスへ帰っていった河原さんが背負っていた。
トークは新入団選手を前へ2人ずつ出して、篠田アナが質問を浴びせる流れ。まずは横浜FCより帰還したGK飯田さんと、レッズから期限付き移籍のDF橋本さん。人が話しているのに、後ろの宇佐美さんと言葉を交わす船山さん…みんな見てますよっ。そんな大卒ルーキーコンビ…平塚で明暗分かれてから1ヶ月も経っていない流経大の主将と関西大のゴーラーは、よりによってペアで呼ばれてしまうのでした。若干むくれる船山ファン2名。
スポーツ一家に育ち、小3よりサッカーを始めたと言う宇佐美さんは、同じ頃、ファミリーソフトバレーボール大会で家族揃って栃木県を訪れた経験があり、今回がそれ以来なのだとか。サイドを何回も駆け上がるところを見てほしいと語ったのでした。次は船山さんのターン。過緊張でたびたび言葉に詰まりながら、プロサッカー選手としての初仕事をこなしました。
―いろんなチームから誘いがあっただろうに、なぜ栃木へ?
「あ。…大丈夫ですか?」(←マイクをテストしている)
―なんで栃木を選びました?
「サポーターの人たちが一番熱いので、選びました」(会場盛り上がる)
―(大学の先輩である)赤井選手に何か聞きました?
「(サポーターが)熱いよ、と言われました。監督もすごいいい人で、雰囲気もすごいいいよ、と」(松田監督、苦笑い)
―持ち味は?
「裏に抜けたり、点を取ることです」
―JFLでやった時の栃木のイメージは?
「すごく怖かったです、ファンの皆さんが」
―(RKUのホームである)たつのこにも、たくさんの(栃木)サポーターが詰め掛けたかと。
「すごい、怖かったです」
―それを味方にできます。
「心強いです!」(会場盛り上がる)
―大学(最終学年)では12点取りましたが、今年の目標はどうします?
「2…桁得点を取ります」(上野コーチ、うんうんと頷く)
―サポーターから「得点王!」との声が。
「目指したいと思います」
※宇佐美さん、抱負を述べる。
「(宇佐美と)かぶっちゃいますが、チームのために、自分が持てる力を、1試合1試合、全て出したいと思うので、応援よろしくお願いします」
マイクを宇佐美さんの分まで回収してスタッフに渡し、着席。次が拓大2部ベストイレブンコンビ(杉本&小野寺)で、4名の大卒が話し終えると、松田監督が彼らに期待するものを問われ、こう答えました。
「リーグ戦は長丁場なので、去年の鴨志田のように、フレッシュな力を期待してます」
さらに「拾ってもらった気持ちが強い」と述べた林さんと、「自分としては(長身の)林とタイプ似てると思うんですが」と関西人らしい軽快なトークを披露した廣瀬さんのペア。栃木のイメージを聞かれ、U字工事や餃子と答える選手の多い中、「朝晩の冷え込みがすごい」と地元住民も納得の答えを出してしまう廣瀬さんは、船山さんとこそタイプが重なる印象を受けました。10番をつける高木さんとレオナルドの話ばかり振られてしまった那須川さんコンビを経て、新コーチ菊池&上野が登場。
KING OF TOCHIGI優作さんは、初めて生で見た大学サッカーが望月&西ヶ谷の筑波大だった私には、神様みたいな存在。今まで地域普及の仕事でしたが、トップチームのアシスタントコーチ(ベンチには入らない)に就任。スカパー!の中継にも出演できなくなるのに対しては、サポーターから惜しむ声が。
「新しい選手を支える立場になるので、選手たちを輝かせていきたいと思います」
「もう一つ(栃木SCの)カテゴリを上げたいという気持ちが強いです」
力強い発言で会場の支持を集める優作さんは、大学時代とほとんどスタイルも変わらず…SC相模原の代表としてJを目指している重良さんや、ヴェルディでS級ライセンス取得に取り掛かる西ヶ谷さんを思い起こせば、人のたどる道は実に数奇だと感じます。それでいて、必然で。
最後は松田監督のお話。新戦力のうち、イベントには間に合わなかったブラジル人FWロボについて問われ、説明します。
「僕が待ち望んでいたストライカー(注:前年の栃木SCの補強は、監督のリクエストに基づいたわけではなかった模様)。177cmくらいの、がっちりした、当たりの強い、テクニックもある25歳です。去年の得点力不足を解消するには、(FWの)入れ替えはしょうがないです。決定機の数は(データによるとリーグ8位と)十分なので、いろんなタイプの選手を揃えました。今後も、シーズンの途中でも、(交渉)相手や予算のこともあるけど、補強して積み上げたいです」
現時点での補強を100点満点で採点したら80点と答えた監督、シーズン中は2日しか神戸の自宅で過ごせなかった単身赴任生活のため、オフは20日程ご家族と過ごして英気を養ったとのこと。新たなるシーズンへの抱負を語ります。
「『1試合2点、失点は1点以下』。(昨年は)シュート数では見劣りしないし、決定機(の数)も上位、シュートを打たれた数も(少ない方で)上位でした。(守備では)シュートを打たせない、(攻撃では)チャンスを作るという土台はできました。(決定力不足で)入れる時に入れなかったので、DFがじりじりしてしまいます。0-0ではダメだから打ち合いになってでも…となると、うちは決定力がないから負けてしまう」
具体的な目標を掲げるように促されると、松田監督は更に語り続けます。
「目指すは昇格なんです! 去年(の目標)は9位とかだったんで、そんな大きなこと言うな…と言われそうですが、1試合1試合を考えたら、勝てない試合なんてないんです。勝負に対する執着心が足りませんでした。勝者のメンタリティが。強いチームは悪い試合でも勝ちます。気迫だとか、足を少しでも伸ばすとか、ちょっとしたことでも先制できれば、勝ちゲームにできた試合がたくさんありました。去年は開幕から負のサイクルへ入ってしまったので、今年はいいサイクルに行きたいです。J1年目だと甘えていました。今年は常に勝つことにこだわってやっていきます。皆さんもいつも通り、スタジアムで熱く応援して下さい」
サポーターからは一方的に受け取るばかりで…と、今年こそはの思いを新たにするのでした。拝聴していて、松田監督が船山さんに期待する“クオリティ”が何か、ちょっと分かった気がしました。試合終了の笛が鳴る直前にゴールネットを揺らして勝ち点を積み上げられる、強豪校のアタッカーとして培ったメンタリティ。祝勝交流会での、少年たちとのおもちゃのボールを使ったリフティングゲームでさえ、勝ちにこだわる大の負けず嫌い。得点感覚と妥協を許さないメンタリティ、松田監督が補強したいとおっしゃるポイントを備えているのです。
イベントの締めくくりは、林さんのリクエスト?により、コアサポのリードによる『栃木県民の歌』大合唱でした。高木さんのトーク時に、彼がFC岐阜の一員として開幕戦で栃木SCに痛手を与えた試合を見たギャラリーの挙手が求められ、私が予想していた以上に多くの来場者が手を挙げていました。響き渡る歌は、栃木SCが地域への帰属意識を表現する媒体として熱愛されている証なのです。これが歌えない選手は試合に出さないですよね、という言葉が司会から監督へ振られてしまう程に。
歌声が帯びる熱量は、私の記憶においては、黄色いユニフォームをまとう栃木県民が、流経大の学生へ容赦なく浴びせていた野次とリンクしています。船山さんだって例外ではありません。
栃木サポの野次を完全スルーしている船山さんを見て、この人は日立台育ちだなぁと山形戦の日、ML席でしみじみと思っていました(Land of Riches過去ログ・入学後初観戦直後)
だから、今は、この歌、好きじゃない……だけど、いつか、グリスタで大声で歌ったりするのかな、と思います。歴史は繰り返すのか、船山さんは私にいつもトレーニングを要求してきます。RKUへ入学した時も、毎日オフィシャルHPを開けて、グレー×ネイビーのユニフォームへ嫌悪感を抱く筑波ファン的心情のコントロールから始まったのです。