2010/11/07

[TOCHIGI] 脊髄

唯我独尊の点取り屋をやるには、周りが見え過ぎてしまう。ならば、もう一人自分が横にいれば良いのか…?


「千明とは仲が良いので、対戦は楽しみですね」

昨年、関東大学リーグMVPに輝いた千明聖典選手。リーグ戦終盤の法政大戦で右膝を負傷、二度の手術と9ヶ月に及ぶリハビリを経て、プロデビューを果たしたのでした。カンスタで4/4に行われた岡山vs栃木に船山さんは帯同するも、目論んでいたお食事会は実現しなかったとか。10/31、グリスタ開催のターンを迎え―出場時間を着々と伸ばす千明さんは、先発ボランチとして船山さんと対峙の時を迎えたのでした。


日立台“凱旋”以降、リカルド・ロボとツートップを組み続ける船山さん。「貴之はスピードもあるし、プレーのイメージがすごく合うんだ。とてもやりやすい選手だよ」(Jマガより)と褒めてくれるエースストライカーをアップ中に叩いたり、ボールをわざと当てたり、気の合う様子を見せていました。集合写真撮影時に掲出された黄色いバナー(試合の冠スポンサー様提供)には、サポーターからのメッセージが隙間なく書き込まれていたのですが、船山さんにゴールを決めて欲しいと望む言葉がいくつもあって、とても嬉しかったです。実際、船山さんが前線へ抜け出すと、メインスタンドがどっと沸いたのです。


立ち上がり、相手よりボールを得たロボが、左サイドよりレンジ長めの一撃を逆サイドネットへ突き刺しました。完全に個人の技量によるもの、うますぎです。酔いしれるスタンド。


「試合開始早々のロボのゴールで、みんながいけるだろうという気持ちになったと思う。その後、球際で強くいけなかった。すべては球際。気持ちで負けていた」


船山さんが試合後に、ゲーム全体をこうまとめています。早過ぎる得点は、勘違いあるいは慢心という影を―ファジアーノを「格下」と呼ぶメディアはその筆頭―栃木イレブンそしてサポーターへ落としていきました。10分も経たないうちに、ゴール左手前より白谷さんに―仙台カップの苦い記憶が脳裏をよぎる―あっさり同点弾を許してしまいました。


試合前コメントで船山さんも口にしていましたし、ファジアーノがガツガツと前線よりプレスをかけてくると、栃木の誰もが分かっていたはず。それなのに、栃木SCはお付き合いをして…相手の土俵に上がっての戦いを結果的に選んでしまいました。猛然とラッシュをかけてくる岡山イレブンの中央に、千明さんは陣取っていました。まだまだコンディションを上向かせる途中で、RKU時代のダイナモぶりからは程遠くとも、的確なポジショニングでカバー。預けられたボールに“間”という衣をまぶし、味方へきっちりと配球するリズムチェンジャーのラストパスは、栃木SCをざくざくと切り裂き、危機に陥れていました。


栃木のアタックが実らず、ファジアーノGK真子さんのゴールキックとなった後半序盤、自陣へ戻りながら船山さんは唐突に千明さんを触りました。このタイミングで旧交を温める?!―とSC席の船山ファンコンビは唖然とするばかり。お互いの定位置が離れているので、直接対決とは簡単にいかないのですが…千明さんへ入った浮き球に立ち塞がろうとした船山さんが、見事にタスク失敗した場面は見かけました。


後半開始から程なく、野田さんのミドルシュートをGK武田さんが前へ落としてしまいます。よく止めたとも言えるのですが、はじいた位置が悪くて台無しに。詰めていた野田さんのセカンドインパクトが、勝ち越し点となってしまいました。結局、ゴールネットが揺れたのはこれが最後で、1-2のスコアで終わったのですけれども、多くの時間帯で受け身にまわり、決定機を創出できなかった(記録上のシュート本数こそ上回っているとはいえ)栃木SCの慢心は否めませんでした。オフェンシブな顔触れとなったSB二人はほとんど攻撃参加できず、船山さんが前線への速いパス出しを期待していたパウリーニョは消えがちで、相棒の本橋さんはディフェンスに追われるばかり。


船山さんが最初にゴール裏からコールを浴びたのも、右サイドの一番後ろで、ゴールラインまでFW白谷さんと併走して割らせたディフェンスに対して。主に左サイドへ流れ、股抜きまで披露してのチャンスメイクに尽力していましたが、フィニッシャーと呼吸が合わなければ水の泡。また、起点は起点であって、本来求められていただろうシューターとしては働けず。シュート、ほとんどありませんでした。翌節は先発落ちしましたけれど、それもやむなしかと。


アディショナルタイムにロボが自ら得たPKを蹴ったのですが、真子さんにはじかれて万事休す。最後の最後になって、ようやく後押しを思い出したかのようなメインスタンドは、その数分を除き、前後は落胆と罵倒に染め上げられた空気の軋む嫌な空間でした。♪ここはグリスタ 俺たちのホーム♪なのですけれども。

皮膚の記憶

努力家を応援するのは公平世界仮説を証明してほしいから。 スージングタッチで癒されないのは昔の男に触れたり触れられたりした記憶が蘇るから。 今の歪みが過去に起因しているのは分かる。 ならば、どうしたらいい?